• 生活習慣病

「肥満=自己責任」ではありません

 肥満という言葉に、どんなイメージを抱きますか?「だらしない」「自己管理ができない」「怠け者」——残念ながら、こうした否定的な印象が日本社会に根強く存在しています。これが、いわゆる「肥満のスティグマ(偏見)」です。
しかし、医学的に見れば肥満は単なる生活習慣の結果ではなく、複雑な生物学的、心理社会的背景を持つ“疾患”です。
そして、何より注目すべきは、肥満を放置すれば心血管疾患や糖尿病、がん、さらには早死にのリスクすら高まるという事実です。

 私は循環器内科医・内科医として、日々多くの患者さんと向き合っていますが、肥満による健康被害を過小評価している方は少なくありません。例えば、最新の研究では、日々の歩数が多い人ほど全死亡リスクが有意に低下することが明らかになっており、特に肥満の方が運動不足に陥ると、心筋梗塞や心不全のリスクが高まります。
また、肥満は慢性炎症を引き起こし、血管内皮機能を損なうことで動脈硬化を進行させます。
これは「見えない、静かな大きなリスク」なのです。

 にもかかわらず、肥満に悩む人たちは治療を受けるどころか、偏見を恐れて医療機関から距離を置いてしまうことがあります。「どうせ怒られるだけ」「こんな体じゃ恥ずかしい」と感じてしまう—この悪循環を断ち切るには、まず私たち医療従事者自身がスティグマ(偏見)をなくし、患者さんを尊重し、共に歩む姿勢を持つことが求められます。
肥満は治療可能です。生活習慣の見直しはもちろん、必要に応じてGLP-1受容体作動薬のような薬物療法、管理栄養士による食事指導、個別に設計された運動療法など、現代医療は多彩なアプローチを提供できます。
とりわけ私たちのクリニックでは、医療とフィットネスを融合させたプログラムを通じて、楽しく継続できる健康習慣づくり、肥満解消を支援しています。

 「見た目」ではなく「その先の生活や命」を見つめてほしいと思います。それが、肥満に対する真の理解への第一歩です。もし今、自分や家族の体重について不安があるなら、一人で悩まず、医師に相談してみてください。
体重計の数字の裏に、命を守るためのヒントが隠れているかもしれません。

 

監修
ゆみのクリニック渋谷桜丘
総合内科専門医/循環器専門医 土肥智貴

 


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