動悸
以下のような症状はありませんか?
急に心臓がドキドキと速く打ち始めたり、脈が飛ぶような違和感があったり、
「あれ?今の何?」と、胸に手を当てて不安になった経験はありませんか?
もしかしたら、それは「動悸」と呼ばれる症状かもしれません。
動悸は、誰にでも起こりうる比較的よくある症状ですが、突然起こると「もしかして心臓の病気かも…」と強い不安を感じてしまうことも少なくありません。
動悸の原因は、心臓に関わるものから、ストレスや生活習慣に関わるものまで多岐にわたります。その多くは心配のないものですが、中には専門的な検査や治療が必要なケースも含まれています。
動悸とは?

「動悸(どうき)」とは、普段は意識することのない心臓の拍動を、ドキドキ、バクバク、ドキン、といった不快な感覚や違和感として自覚する症状のことです。
感じ方は人によって様々で、以下のような表現をされることが多いです。
●心臓が速く打つ、駆け足しているよう
●心臓が強く打つ、ドンドン壁に当たるよう
●脈が飛んだり、抜けるような感じ
●心臓が一時的に止まるような感覚
●心臓がブルブルと震えるよう
●首や胸のあたりで脈を強く感じる
動悸は病気そのものではなく、あくまで体に何か原因があって現れる「症状」の一つです。発熱すると心拍数が上がるように、体の変化に対する生理的な反応の場合もあれば、何らかの病気が隠れているサインの場合もあります。
動悸の様々な原因:心臓?それとも心臓以外?
動悸の原因は非常に多様で、必ずしも心臓病だけが原因ではありません。大きく分けて「心臓が原因の場合」と「心臓以外が原因の場合」があります。
心臓が原因の場合
心臓が原因の動悸で最も多いのは、不整脈です。不整脈とは、心臓の拍動リズムや速さが乱れる状態の総称です。
- 期外収縮(きがいしゅうしゅく): 脈が飛んだり、ドキンとしたりする、最もよく見られるタイプの不整脈です。多くは心配ありませんが、頻度が多い場合や連発する場合は注意が必要です。
- 頻脈(ひんみゃく): 脈が異常に速くなる不整脈です(例: 発作性上室性頻拍、心房細動、心室頻拍など)。突然始まって突然止まるものや、持続するものなど様々です。
- 徐脈(じょみゃく): 脈が異常に遅くなる不整脈です。動悸として自覚することは少ないですが、めまいや失神を伴うことがあります。
また、不整脈以外にも、心臓弁膜症、心筋症、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞の後遺症)といった他の心臓病が原因で動悸が起こることもあります。
心臓以外が原因の場合
心臓に直接の問題がなくても、様々な原因で動悸は起こります。
- 精神的な要因: ストレス、不安、緊張、極度の疲労、睡眠不足などは、自律神経の乱れを引き起こし、動悸の非常に一般的な原因となります。パニック障害の症状の一つとして強い動悸が現れることもあります。
- 生活習慣: 多量のカフェイン摂取(コーヒー、エナジードリンク)、アルコールの飲みすぎ、ニコチン(喫煙)、寝不足なども心拍数を増やし、動悸を誘発します。
- ホルモンの影響: 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、甲状腺ホルモンが増えすぎて全身の代謝が上がり、動悸、汗をかきやすい、体重減少などの症状が出ます。更年期障害のホットフラッシュに伴って動悸を感じる方や、妊娠中に動悸を感じる方もいます。
- 貧血: 血液中の酸素を運ぶヘモグロビンが不足すると、体が酸素不足を補おうとして心臓が速く打つため、動悸を感じやすくなります。
- 発熱: 風邪などで熱がある時も、体の代謝が上がり心拍数が増加するため動悸を感じることがあります。
- 低血糖: 血糖値が下がりすぎると、血糖を上げようとする体の反応で動悸や手の震えなどが起こることがあります。
- 薬の副作用: 一部の風邪薬(血管収縮剤を含むもの)、喘息治療薬、ダイエット薬などに、動悸を引き起こす成分が含まれていることがあります。
このように、動悸の原因は本当に様々です。「もしかしたら…」と思い当たる原因がある場合も、そうでない場合も、一度医療機関で相談することが大切です。
こんな動悸は要注意!すぐに病院に行くべきサイン

動悸の多くは、心臓病が原因ではないか、あるいは軽症な不整脈であることも多いですが、中には迅速な対応が必要な危険な動悸も存在します。
以下の症状を伴う動悸がある場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。
●動悸と同時に胸の痛みや圧迫感がある
●動悸と共に息切れや呼吸困難を感じる
●動悸中にめまいやふらつきがある、または意識が遠のく感じがする(失神しそうになる、実際に失神した)
●動悸が何時間も続く、または安静にしても治まらない
●今まで心臓の病気(不整脈、心筋梗塞、心不全など)を指摘されたことがある
●動悸が運動中に起こる
●動悸による不安が非常に強く、日常生活に支障が出ている
上記に当てはまらなくても、動悸が頻繁に起こる場合や、原因が分からず不安を感じる場合は、念のため医療機関で相談することをお勧めします。「動悸くらいで…」と我慢せず、一度しっかり調べてもらうことが安心に繋がります。
必要な検査
以下のような検査を行います。
- 身体診察: 聴診器で心臓や肺の音を聞いたり、脈拍を測ったりします。
- 安静時心電図: 検査を受けている間の心臓の電気的な活動を記録します。不整脈があれば捉えられますが、動悸が起きていない時は異常が出ないこともあります。
- 血液検査: 貧血の有無、甲状腺ホルモンの値、血糖値、電解質などを調べます。
これらの検査で原因が特定できない場合や、さらに詳しい検査が必要と判断された場合は、以下のような検査を追加で行います。
- ホルター心電図(24時間心電図): 小型の心電計を装着して、普段通りの生活をしながら24時間心電図を記録する検査です。動悸が起きた時の心電図を捉えるのに非常に有効です。
- 心臓超音波検査(心エコー): 超音波を使って心臓の大きさ、動き、弁の状態などを調べ、心臓の構造的な異常がないかを確認します。
- イベントレコーダー、携帯用心電計など: 動悸が起きる頻度が少ない場合に、症状が出た時にご自身で記録できる装置です。
- 負荷心電図: 運動などで心臓に負荷をかけた時の心電図を調べます。
これらの検査を通じて動悸の正確な原因を診断し、最適な治療法や今後の対応方針を決定します。
動悸の治療法
心臓が原因の場合
不整脈の種類や心臓病の種類に応じて、心臓の働きを調整する薬(ベータブロッカー、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬など)が処方されます。場合によっては、カテーテルを用いた治療やペースメーカーの植え込みなど、より専門的な治療が必要となり、循環器内科の専門医療機関へご紹介することもあります。
心臓以外が原因の場合
- ストレスや不安が主な原因であれば、生活習慣の改善指導や、必要に応じてカウンセリング、自律神経を整える効果のある薬などが検討されます。
- 甲状腺機能亢進症であれば、その病気自体の治療を行います。
- 貧血であれば、鉄剤の投与などを行います。
- 薬の副作用が疑われる場合は、可能な範囲で薬の変更や中止を検討します。
- カフェイン、アルコール、喫煙などが誘因となっている場合は、それらを控えるように指導します。
原因が特定できない場合や、検査で「心配ない動悸」と診断された場合は、不安を取り除くための説明(安心指導)が非常に重要な治療となります。症状が辛い場合は、対症療法として漢方薬などが処方されることもあります。
日常生活での注意点とセルフケア

動悸の症状を和らげたり、予防したりするために、日常生活で気をつけたいポイントがいくつかあります。
●ご自身の動悸を把握する:
どのような時に動悸が起こりやすいか(食事の後、疲れている時、特定の飲み物を飲んだ時など)を意識したり、メモしたりすると、原因や誘因が見えてくることがあります。
●誘因を避ける:
カフェイン、アルコール、タバコなど、ご自身の動悸を誘発しやすいと感じるものは控えるようにしましょう。
●ストレスを管理する:
ストレスは自律神経を乱し、動悸を引き起こす大きな要因です。リラックスできる時間を持つ、適度な運動をする、趣味を楽しむ、十分な睡眠を取るなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけましょう。
●規則正しい生活:
睡眠不足や不規則な生活は体のリズムを崩しがちです。できるだけ規則正しい生活を心がけましょう。
●バランスの取れた食事
貧血予防なども含め、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
これらのセルフケアは症状の改善に繋がることがありますが、まずは医療機関で原因をしっかりと調べてもらうことが前提です。
動悸が気になる方は当院にご相談ください
「動悸があるけど、どの病院に行けばいいの?」「原因が分からなくて不安…」
当院では、動悸の症状について丁寧な診療を行っております。
患者さんが感じている不安や辛さに寄り添い、まずはじっくりとお話をお伺いします。動悸の原因は多岐にわたるため、心臓の病気だけでなく、心臓以外の原因も視野に入れて慎重に診断を進めます。「動悸くらいで病院に行くのは大げさかな…」と思わず、少しでも気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。