機能性ディスペプシア

「胃もたれがずっと続く…」 

「少し食べただけなのにすぐお腹がいっぱいになる…」 

「みぞおちが痛いけど、病院で検査してもどこも悪くないと言われた…」 

このような胃の不調が慢性的に続き、つらい思いをされている方は、もしかしたら「機能性ディスペプシア」かもしれません。 

「検査で異常がないなら、気のせいなのかな?」と不安に思ったり、「どこに相談したら良いのか分からない」と悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 

機能性ディスペプシアは、胃や十二指腸に潰瘍や炎症などの明らかな病気がないにも関わらず、慢性的な胃の症状が現れる病気です。決して「気のせい」ではなく、れっきとした病気として、現在多くの患者さんが悩んでいます。 

機能性ディスペプシアとは?「異常なし」と言われる胃の不調

機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia; FD)は、胃の痛み(心窩部痛)や胃もたれ感(心窩部灼熱感、食後膨満感、早期満腹感)といった不快な症状が慢性的に続いているにも関わらず、胃カメラなどの詳しい検査をしても、症状の原因となる潰瘍やがん、炎症などの病気が見つからない状態を指します。

「機能性」という言葉が示すように、胃や十二指腸そのものに目に見える病変があるわけではなく、胃の「働き(機能)」に問題が生じていることで症状が引き起こされると考えられています。国内でも多くの人が罹患している、比較的一般的な病気です。

どんな症状があるの?知っておきたい機能性ディスペプシアのサイン

機能性ディスペプシアの症状は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の2つのタイプ、またはその両方が現れることが多いです。 

1.食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome: PDS)

  1. 食後の胃もたれ(食後膨満感): 食後にお腹が張ったような、もたれたような不快感が続く。 

  2. 早期満腹感: 食事を始めてすぐに、少量しか食べていないのに満腹になってしまい、それ以上食べられなくなる。 

2.心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome: EPS)

  1. みぞおちの痛み(心窩部痛): みぞおちのあたりが痛む。食事とは関連しないことも、関連することもある。 

  2. みぞおちの灼熱感(心窩部灼熱感): みぞおちのあたりが焼けるように感じる。 

これらの症状が、少なくとも6ヶ月以上前からあり、直近3ヶ月は基準を満たしている場合に機能性ディスペプシアと診断されることが一般的です。 

その他にも、吐き気、げっぷ、胸焼けなどを伴うこともあります。症状のタイプや程度は人によって大きく異なり、日によって波があることも特徴です。 

どうして胃カメラで異常が見つからないの?

こんなに辛いのに、胃カメラで異常なしと言われた…」という経験は、機能性ディスペプシアの患者さんが最ももどかしく感じる点かもしれません。 

 

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、潰瘍、炎症、ポリープ、がんなどの「構造的」な病変を見つけるのに非常に優れた検査です。 

 

しかし、機能性ディスペプシアは、胃の「動き(蠕動運動)」が悪かったり、食べたものに対する胃の「拡張(適応性弛緩)」がうまくいかなかったり、胃や十二指腸の痛覚が「過敏」になっていたり、といった「機能的」な問題が主な原因です。これらの問題は、内視鏡で見ただけでは分からないことが多いのです。 

 

したがって、胃カメラやその他の血液検査、腹部超音波検査などで他の病気が確実に除外された上で、症状に基づいて「機能性ディスペプシア」と診断される、という流れになります。 

機能性ディスペプシアの原因は何?

機能性ディスペプシアの原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。 

  • 胃の運動機能異常: 胃が食べたものをうまく送り出せない(胃排出遅延)ことや、食事をしても十分に広がれない(胃適応性弛緩障害)ことが症状を引き起こすことがあります。 
  • 内臓の知覚過敏: 胃や十二指腸が、通常の刺激(胃が伸びることや少量の酸など)に対して過敏に反応し、痛みや不快感として感じてしまう状態です。 
  • 脳と腸の連携異常(脳腸相関): 脳と消化管は自律神経などを介して密接に影響し合っています。この連携がうまくいかないことも原因となります。 
  • 心理的要因: ストレス、不安、うつ病などが、胃の運動や知覚に影響を与え、症状を悪化させることがあります。ただし、ストレスだけが原因の全てではなく、あくまで多様な要因の一つです。 
  • 胃酸の影響: 機能性ディスペプシアの患者さんの中には、正常な胃酸分泌でも症状が出やすい方がいます。 
  • 感染後の状態: 胃腸炎にかかった後に、機能性ディスペプシアの症状が出やすくなることがあります。 
  • その他の要因: 喫煙、睡眠不足、不規則な生活、食習慣なども関連している可能性が指摘されています。 

これらの要因が複合的に関与し、胃の不調として現れるのが機能性ディスペプシアです。 

機能性ディスペプシアは深刻な病気?放っておくとどうなるの?

機能性ディスペプシアは、胃がんや潰瘍など、命に関わるような病気や、将来それらに進行する病気ではありません。この点はご安心いただきたい大切なポイントです。

しかしながら、慢性的に続く胃の不調は、食事を楽しめなくなったり、仕事や日常生活に支障をきたしたりと、患者さんのQuality of Life(生活の質)を著しく低下させてしまう病気です。そのため、「ただちに体に危険はないから大丈夫」と放置せず、適切な診断と治療を受けることが大切です。

機能性ディスペプシアの治療と改善策

機能性ディスペプシアの治療は、原因が多様であるため、患者さん一人ひとりの症状や状態、考えられる原因に合わせてオーダーメイドで行うことが重要です。 

薬物療法

  • 胃酸分泌抑制薬(PPI、H2ブロッカー):胃酸の分泌を強力に抑えることで、胃の過敏性を和らげたり、胃酸による刺激を軽減します。 
  • 消化管運動改善薬(Prokinetics):胃や十二指腸の動きを活発にし、食べたものの流れを良くします。 
  • 内臓知覚過敏改善薬: 痛みを和らげる作用を持つ薬や、脳腸相関に作用するタイプの薬(抗うつ薬などを少量使用する場合も)が有効なことがあります。 
  • 漢方薬:個々の体質や症状に合わせて処方されます。 これらの薬を単独または組み合わせて使用し、症状の改善を目指します。 

生活習慣・食事の改善

  • 食事: 一度にたくさん食べず、少量ずつ数回に分けて食べる、よく噛む、ゆっくり食べることを心がけましょう。脂肪分の多い食事、刺激物(香辛料)、アルコール、カフェイン、炭酸飲料などは症状を悪化させやすいとされていますが、何が triggers なるかは個人差が大きいので、ご自身の体調を見ながら調整することが大切です。 
  • ストレス管理: ストレスは症状を悪化させる大きな要因の一つです。十分な睡眠、適度な運動、趣味やリラクゼーションの時間を持つなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけ、実践することが重要です。 
  • その他: 禁煙は必須です。規則正しい生活リズムも胃の機能には大切です。 

機能性ディスペプシアは、医師と患者さんが一緒に症状と向き合い、様々なアプローチを試しながら、ご自身に合った改善策を見つけていくプロセスが重要になります。 

機能性ディスペプシアにお悩みなら当院へご相談ください

慢性的な胃の不調は、他人に理解されにくく、「気のせい」と片付けられてしまうこともあり、一人で抱え込んでしまいがちです。 

当院では、機能性ディスペプシアをはじめとする消化器疾患の専門的な診療を行っております。 

まずは患者さんの症状やこれまでの経過、生活習慣などを丁寧にヒアリングし、必要に応じて他の病気がないかを確認するための検査を行います。その上で、機能性ディスペプシアと診断された場合は、最新の知見に基づき診療、治療をいたします。 

 

【電話予約】03-5784-2268

【Web予約】https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08003/

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