座りっぱなしのリスクについて
オフィスで一日中モニターに向かう―その時間が、あなたの血管年齢を静かに進ませているかもしれません。
UK バイオバンク約9万人の解析では、1日10時間以上座る人は5時間未満の人に比べ、心血管疾患と死亡の危険が明らかに高いと示されました(JACC 2024)。しかも週末だけの運動では、この「長時間座位」のダメージは打ち消せません。
座りすぎが招く問題は、脚の筋ポンプ停止による血流うっ滞、使われない骨格筋によるインスリン抵抗性の悪化、活動低下に伴う慢性炎症の三つに要約できます。いずれも動脈硬化を加速させる要因で、放置すれば高血圧や脂質異常症、冠動脈疾患へと連鎖します。
しかし解決策は「こまめに立つ」だけでも十分効果があります。座位30分を軽い動きに置き換えると心血管イベントが約2割減少するという報告があり、激しい運動を義務づけるより日常の小さな動きを増やすほうが続けやすいのです。たとえば毎時間に1分立って背伸びと深呼吸をし、90〜120分ごとにデスク周りを一周歩く。昼休みには階段を1~3フロア上り下りし、会議前後にその場でカーフレイズ(かかとの上げ下げ)を20回行う――これだけで下肢の筋ポンプが刺激され、静脈血が押し戻されます。
「立ちっぱなしデスクなら万全か」と聞かれますが、同じ姿勢で静止すれば立位でも下肢静脈圧は上がり、静脈瘤を招く恐れがあります。座る・立つ・歩くをこまめに切り替えることこそが、血管にとって最適です。アラームやスマートウォッチのスタンド通知を一定間隔で設定し、行動のきっかけを環境に埋め込みましょう。
もちろん、週150分以上の有酸素運動や筋トレが動脈硬化を抑える“王道”ですが、長時間座位というベースのリスクを減らさなければ、その効果は半減します。まずはデスクワークの合間に立ち上がる仕組みをつくり、その上で計画的な運動をプラスする――この二段構えが現実的で理にかなったアプローチです。
「集中が切れるのが不安」という人は、1時間おきに給水ボトルを満たしに行くなど、立つ理由を日常のタスクと結びつけてみてください。次のメールを書き終えたら席を立ち、背伸びをしながら深呼吸。小さな行動でも続ければ大きな成果になります。今日から“血管に優しいワークスタイル”を始めてみませんか。
監修
ゆみのクリニック渋谷桜丘
総合内科専門医/循環器専門医 土肥智貴
*土肥医師が健康に役立つ情報や、生活習慣病の予防についてなどをInstagramでも発信しています*
ぜひ【@dr.doppy_dohitomotaka】をご覧ください!(アカウント名をクリックしていただくとInstagramページに移行します)
*当院が連携し、隣接しているメディカルフィットネスジム「LEX渋谷」ではご希望やライフスタイルに合わせプログラムを提供する「肥満治療プログラム」がございます。詳細は「LEX渋谷」のHPをご覧ください*
LEX渋谷 HPはこちら