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ストレスと血圧について – 忙しい都会で心臓や血管を守るには –

 現代の都市生活では、仕事、通勤、情報過多といった慢性的なストレスが日常にあふれています。こうしたストレスが続くと、自律神経のバランスが崩れ、交感神経(身体の活動を活発化させる神経)が優位になりやすくなります。その結果、心拍数の上昇や血管の収縮が起こり、血圧が一時的に上がります。これが長く続くと、高血圧の発症や悪化の要因となるのです。

 実際、慢性的な心理的ストレスと高血圧、さらには心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇との関連性は、多くの臨床研究で報告されています。たとえば、2021年に有名医学誌『The Lancet』に掲載されたレビューでは、心理社会的ストレスが心血管イベントの独立したリスク因子であることが、明確に示されました。

 では、忙しい日常の中で私たちはどう対処すればよいのでしょうか。まず大切なのは、「日常に余白をつくること」です。
1日数十分、いえ、数分でも構いません。深呼吸や軽いストレッチ、散歩、短い昼寝など、自律神経を整える行動を意識して取り入れましょう。質のよい睡眠と、過度なカフェインやアルコールの摂取を控えることも、高血圧予防にとても有効です。

 渋谷のようなスピード感のある街にいると、つい「立ち止まること」に後ろめたさを覚えがちですが、実はそれが皆さんの健康を維持する第一歩になるかもしれません。特に血圧が高めの方や、日によって数値が大きく変動する方は、少しだけでも立ち止まってみませんか?それでも血圧が不安定な場合は、ぜひ医療機関での早めの評価とアドバイスを受けてください。未病のうちに動くことが、将来の健康につながります。


監修
ゆみのクリニック渋谷桜丘
循環器専門医 土肥智貴