炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは
消化管の粘膜に炎症を生じ腹痛や下痢・血便などの症状をひきおこす疾患で、主に、慢性的に炎症を繰り返す潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの疾患のことを指します。
どちらも比較的若い方にも発症しやすく、患者数は増加傾向にあります。国の指定難病にもなっており、指定難病の中でも最も患者数が多くなっています。
原因
原因はまだ明らかではありません。が、何らかの原因で免疫に異常が生じ、自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃してしまうことで炎症がおきる病気です。
現在完全に治癒させる治療法も確立されていませんが、近年治療法は目覚ましく進歩しており、様々な治療薬や治療法が開発されています。定期的な検査や治療を継続することで、寛解状態(症状が落ち着いている状態)を維持することが重要です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は主に大腸の粘膜に炎症が起こり、粘膜にびらんや浅い潰瘍を形成し腸管のむくみや出血を引き起こす病気です。典型的には、直腸から連続性に奥(口側)の腸管へと炎症の範囲が広がっています。
典型的な症状として、1日5~10回前後の下痢・血便が続きます。
病気の範囲や重症度は患者さんによって異なり、軽い方だと便に少し血が付着するくらいですが、重症の方では全大腸に強い炎症が起こり、1日に20回以上も下痢・血便が起こり、貧血や腹痛、発熱を伴います。長期間炎症が持続することにより大腸がんが発生することもあります。
主に薬物治療を行うことで症状が軽快することが多いですが、薬や減量を中止すると症状の再発がしばしば認められます。
クローン病
クローン病は口から肛門まですべての消化管に炎症が起こりうる疾患です。おもに小腸・大腸・肛門が好発部位となります。部位や重症度により症状は異なりますが、下痢・腹痛の症状をきたし、発熱・体重減少もしばしばみられます。肛門部に腫れや痛みが起こることもあります。クローン病は腸に深い潰瘍(粘膜の深い傷、えぐれ)が非連続性に(とびとびに)起こるため、腸が狭くなったり(狭窄)、腸に穴が開いたり(穿孔)、腸と腸がトンネルが形成(瘻孔)されたりします。肛門部では、直腸の潰瘍が肛門横の皮膚とトンネルを作る痔瘻を形成することがあります。
検査
大腸内視鏡検査で直接大腸粘膜を観察し、炎症の程度や範囲を観察します。また、粘膜の一部を採取し(生検)病理検査を行い診断します。ほかの病気との鑑別のため便培養や血液検査も行います。小腸にも病変が疑われる場合には、腹部CT・MRI検査や消化管造影検査、小腸内視鏡検査・小腸カプセル内視鏡検査(小型のカメラを飲み込む)なども行います。
治療
治療は内科的治療(お薬での治療)・外科的治療(手術)・食事療法・透析療法(血球成分除去療法)などがあります。主に内科的治療を行い、症状が落ち着き安定した状態を保ち再発がないようにコントロールをすることが治療目標となります。